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いっしょに育て隊

第55回
トリエ京王調布 菅野厚さん 伊藤将希さん (株)日建設計 祖父江一宏さん
「てつみち」これまでストーリー

2023年9月8日 公開

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京王線調布駅直上および隣接地にトリエ京王調布がオープンしたのは2017年のこと。線路跡地には3棟の商業施設が建ちC館に面した細長いスペースは「てつみち」として、親子連れはもちろん多くの市民に利用され、親しまれてきました。決して設備が整った場所…というわけではないのに、誰にとっても居心地よく、多くの人たちで賑わっているのはいったい…なぜ…?

 

知られざる「てつみちの始まり」

 

トリエ京王調布の支配人・菅野厚さんと、てつみちを含むトリエ京王調布の設計を担当した株式会社日建設計の祖父江一宏さん、そして実際にてつみちでのイベント開催なども担当している運営担当の伊藤将希さんに、「てつみち」誕生から今日までのストーリーを伺いました。

 

 

菅野さん  京王線が地下化するにあたり、そこで生まれる地上の土地をどう活用するか、調布市と協議を重ねていました。その中で、駅直上の土地に京王電鉄が商業施設を建設し、てつみちがある場所を含むそれ以外の土地は段階的に売却するという形の取り決めとなりました。2017年のトリエ京王調布オープン時、当時の予定で土地売却までの期間が2年ほどあったので、暫定活用として「あの場所で何ができるか」を考えたのが始まりです。

 

京王電鉄株式会社 トリエ京王調布支配人の菅野厚さん。実は「てつみち」の名付け親!

 

祖父江さん 設計担当としては、調布の中心エリアで、線路跡地ということや街全体の商業施設、商店街、住宅地などとの関係性に特徴がある点等を考慮し、ここでのあるべき姿を構想しはじめました。京王電鉄さんも、商業施設や鉄道施設だけではなく、調布の街に対して何ができるかを非常に重要視されており、きっと特徴的な場になるだろうという目論見はありました。

 

「調布に望ましい場にしたい」と、日建設計の祖父江一宏さん

 

その後市民へのヒアリングや調査、調布市や地元商店会など関係者との意見交換を行う中で、少しずつ活用のビジョンが作られていきました。

 

「鉄道の記憶」を残す

 

コサイト  2年ほどの期間限定、という暫定的な活用だったはずが、すでに6年目となるてつみち。当初のコンセプトは…?

 

菅野さん 鉄道跡地ですから「鉄道の記憶」は残したいと思いました。また、いろいろな人が集い、賑わう場所にしたいとも。そして「どう使われるか」という用途を指定するのではなく「来てくれた方たちがそれぞれの使い方で、自由にのんびり過ごしてもらえたら」ということを大切にしていこうと考えました。

 

コサイト てつみちにはベンチなのか、テーブルなのか、ベッドなのか…使い手次第で用途が変わるインテリアのような什器のようなものが設置されています。もちろん遊具でもなく…。

 

祖父江さん てつみちには、利用者が「どう使うか」を考えてもらえるような、曖昧なものを置きました。来た人が思い思いに過ごせるよう「余白」を作りたかったのです。ですからあえて仕上げもラフに、作り込みすぎないように。誰もが使えて愛着が持てる、その人の居場所になるようにということを探求し、物を作り、配置しました。使い方が決まっている遊具とは違うのです。

 

使い方はその人次第。曖昧さが能動性を引き出しているという

コサイト みなさん、座ったり登ったり、鬼ごっこをしたり…思い思いに使っていますよね。

 

祖父江さん 設計を通して、人の活動や振る舞いをどう起こすか、どう能動性をもたせるかということを、かなり細かくリサーチして形にする「アクティビティデザイン」という考え方があります。てつみちに設置したものは、機能性を満たした上で、能動性をいかに引き出すかということを考えて作りました。

 

ワイン樽の穴に、子どもたちはみな頭を突っ込むのです

 

コサイト 行動したくなる場作り…すごく魅力的です!鉄道跡地という細長い土地だけに、難しさもあったのでは?

 

祖父江さん あのような細長い土地を「線形敷地」というのですが、それはそれで街との接点が多いとも言えるわけです。線形なのでどうしてもゾーンを区切る必要がありましたが、てつみちではできるだけ緩やかなゾーニングにとどめ「ここはこういうエリアだ」と決めることはしていません。

あえてゆるやかなゾーニング。商店街入り口に面した敷地

 

祖父江さん また、設置してある物も、何となくその先にいる「人の気配が感じられる高さ」に設定してあります。たとえば小さいお子さんを遊ばせていても、目が届きやすく、保護者に限らずそこにいる誰かがちゃんと見守れるような…そんなことも意識しました。

 

見通しの良さは、設置してあるものの高さの設定が計算されているから
店舗との境目に、鉄道跡地を思い起こすレール
柱部分にもレールが。レールの型番は関係者でペイント
てつみち敷地内には4本のレールを埋め込みました。丁度、同じ位置に地上に走っていた京王線の跡地で、まさに鉄道の記憶

 

禁止事項なし? 遊びを生み出す場に!

 

菅野さん てつみちは、朝から夜まで老若男女、本当に多くの方に使っていただける場所になりました。朝は通勤通学の動線として、午前中には保育園のお散歩コースとして子どもたちの遊び場にもなっています。お昼にはランチをする人、パソコンを広げて仕事をする人なども見かけますし、夕方には下校途中の中高生が楽しくおしゃべりしています。芝生に座ってくつろぐ人、ダンスなどの動画を撮影している人も見かけます。

 

コサイト 多世代にとって居心地がよい場所になっていますね。先程、軽くボール遊びをしている子どもたちもいましたが…?

 

祖父江さん てつみちには禁止事項の掲示がほとんど無いんですよ。京王電鉄さんがきめ細かく維持、管理、運営をしてくださっているからこそ実現しているのですが。

 

菅野さん  「ボール遊びをしている」と連絡が入ると、すぐに現場に行きます。危険な遊び方をしている場合は「危ないよ」と伝えています。ボールで遊んでもいいけれど、たとえばサッカーをすると道路に出てしまって危険ですから。お声がけすればすぐに聞き入れてくださいます。

 

祖父江さん  危険な使い方には注意が必要です。けれど、たとえば芝生のスペースも、見方によっては…たとえば丸いサッカーコートがあったらだめなのかなとか思うわけです。僕としては、てつみちでは(危ないこと、近隣に迷惑がかかるようなことでなければ)何をやってもよくて、むしろそこでしかできない遊びを生み出して、創造してほしいと考えています。

 

人工芝エリアは小さい子どもにも人気

 

伊藤さん てつみちで僕が魅力的だと感じているところは「チョークの貸し出し」です(C館1階の店舗で貸し出しています)。今は道路に絵を描くこともままならない時代ですが、てつみちでは地面に思い切り描けるんです。これは子どもたちにとっても、きっとすごくいいことなんじゃないかなと思います。

 

トリエ京王調布の運営担当・伊藤さん

 

コサイト 最高です!怒られることなく、安心して絵を描けるなんて。そして、都度きれいにしてくださっているんですね。

 

伊藤さん 僕の地元は公園がたくさんあったのですが、てつみちのような場所はありませんでした。貴重だと思います。

 

地域とつながりを「開拓」する

 

コサイト たくさんのイベントも開催されてきましたね。

 

菅野さん  本当にたくさん実施しました。全体を使ったマルシェのようなイベントは もちろん、ステップになっているところをステージに見立ててアーティストに楽器演奏をしてもらったり、大道芸の方にも来てもらいました。他にも昔遊びや紙芝居、 子どもたちが自然エネルギーを身近に感じてもらえるようなイベントもありました。ハンモックやデッキチェアを設置したり、地元企業のキッチンカーに来てもらったり …いずれもお客様が参加できるものを、とお願いしてきました。

 

ステップをステージに見立てて(写真提供:トリエ京王調布)
夜のイベントもてつみちに映える(写真提供:トリエ京王調布)
(写真提供:トリエ京王調布)

 

コサイト イベントの主催者は地域でも活動している方が多いのも印象的です。地域との連携はご苦労もあるのでは?

 

菅野さん つながりの無いところから「開拓」していくので確かに大変さはあります。それに、たとえばヒーローショーのように既存のパッケージを活用するのであれば「型」は決まっていますが、「型」の無いものを作るのはどうしても時間と労力がかかりますので。

 

伊藤さん 少しずつ地域の方とつながり、広がってきていると思います。イベントを主催する方たちと接していると、てつみちに思い入れを持ってくださると感じることが多くて、それがすごく嬉しいんです。

 

コサイト 地域の人たちによるイベントは、親近感もあります。

 

伊藤さん  「地元とつながる」ことを大事にしているという点はトリエならではだと 感じています。てつみちに飾っていた提灯は、トリエA館にある「こもれびテラス」で提灯づくりのワークショップに参加してくださったみなさんが作ったものです。作るときにお客様とつながり、飾った提灯を見に来ていただき、最終的にはその提灯は お客様にお届けします。少なくとも3回はつながっているんです。そんなつながりを大切にしていきたいですね。

 

季節ごとに飾られる。夏は提灯、5月はこいのぼり
夕刻になると明かりが灯る提灯(写真提供:トリエ京王調布)
調布銀座商店街入り口前に、旧調布駅舎の絵。ずいぶん以前にはここに駅舎が(絵:Mariya Suzuki)

 

菅野さん  たくさん商業施設がある中、トリエに足を運んでいただこうと思ったら、 何か特徴を出していかなくてはなりません。我々は「調布ならでは」「トリエならで は」というところを大切にしていきたいと考えています。

 

コサイト  てつみちがここまで愛される存在になったのも、トリエさんが地域を大切にしていこうというマインドがあってこそかもしれませんね。想定以上の愛され方というか。

 

(写真提供:トリエ京王調布)

 

祖父江さん 働く人も、遊ぶ人も、過ごす人も…いろいろな人達、使い方がミックスされて、誰もが利用できる場、コモンスペースになっていったのは、まさに想定以上です。てつみちに来るたびに見る風景、利用している方の使い方が違うので。本当に、設計者冥利につきます!

 

「設計者冥利につきます」と祖父江さん
フェンスは線路があった当時のまま。さりげなくベンチが

そして「てつみち」クローズへ

 

他地域からも視察が絶えないというてつみちですが、2023年9月下旬頃に閉鎖されることになりました。その後は調布市が整備を行う予定になっています。

 

 

とても残念ではありますが、クローズにともない、トリエ京王調布では9月18日 (月・祝)に「お別れ会(棟下式)を予定しています。イベント詳細については、後日コサイトでもお知らせしますのでお楽しみに。

 

土地の暫定活用だった「てつみち」が、設置者である京王電鉄さんにとっても、設計者である日建設計さんにとっても「想定以上」の場となりました。何より「遊具がなくても子どもは遊ぶ」ということを、ここで目の当たりにしている方は少なくないのでは。

 

ぜひ「お別れ会(棟下式)」にもご参加いただき、在りし日のてつみちを思い、ともに遊び、お別れを惜しみましょう。

(撮影:楠聖子)

執筆者

写真左からトリエ京王調布の支配人・菅野厚さん、運営担当の伊藤将希さん、株式会社日建設計の祖父江一宏さん。

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